社内の資料をAIに読ませると、何ができる?
長く事業を続けてきた会社には、多くの資料が積み上がっています。過去の見積や受注の記録、日報、提案書、製品の仕様書、社内の手順書。これらをAIに読ませると、探していた情報がすぐに見つかり、長い資料の要点がつかめ、過去の提案書をもとに新しい提案の下書きができます。
これは、効率化の使い方として価値のある取り組みです。『AI収益進化論』は、社内に蓄積された過去の記録や文書を使って今の業務を速くするのを、効率化AIの典型として挙げています。まずここから始める会社が多いのは自然なことです。
それだけでは、なぜ経営に効かない?
社内の資料が語るのは、これまでにやってきたことです。過去の見積をいくら速く探せても、まだ出したことのない見積は出てきません。資料だけを材料にすると、AIの答えは過去のやり方の延長に収まります。
同書は、AIは学習したものの外側には原理的に届かないと書いています。AIが学んでいるのは、これまでに書き残された文字の集まりだからです。会社の中でも同じことが言えます。書き残された資料だけを渡せば、AIは書き残されたことしか扱えません。
一方で、会社の中で最も価値のある知識は、書き残されていないことが少なくありません。なぜあの顧客は長く取引を続けてくれるのか。なぜあの案件は失注したのか。ベテランの職人は、どこを見て良し悪しを判断しているのか。ホワイトペーパー『AXアーキテクトの実装論』は、こうした現場での体験を通じてしか得られない知識をFI(Field Intelligence、現場知)と呼び、事業の判断に決定的に重要なものとしています。
書かれていない知識は、どう取り出す?
書かれていない知識は、話してもらうと取り出せます。AIは、その手間を大きく下げました。
例えば、ベテランの社員や経営者自身に、得意先ごとの事情や、仕事で気をつけていることを話してもらい、録音します。文字に起こした内容をAIで整理し、本人に確かめてもらえば、それまで頭の中にしかなかった知識が、社内で使える形になります。営業担当が商談の後に一言ずつ記録を残し、断られた理由を集めていく方法もあります。
豊田市の「TAKEOFF Camp 2026」では、参加者が地域の製造業の現場を訪ね、職人の技術を音声で記録するサービスを試作しました。記録されずに失われていく知識をどう残すかは、多くの地域企業に共通する課題です。
経営の判断に、どうつなげる?
資料と現場の知識がそろったら、AIに経営の問いを投げかけます。問いの例を挙げます。
過去10年の受注の記録と営業担当のメモを合わせて、どんな顧客が、どんな理由で買ってくれたのかを整理する。失注した案件に共通する点を探し、次の提案で何を変えるかを考える。自社の技術や設備が、いまの取引先とは別の業界のどんな困りごとに使えそうかを洗い出す。
AIの答えは、そのまま正解にはなりません。答えを見て、現場の感覚と違うところを直し、新しい情報を足して、また問いかけます。そのうえで、有望に見えた案を、顧客に見せる試作やページにして確かめます。社内の資料は過去を語りますが、現場の知識と組み合わせて試すことで、次の事業の材料に変わります。
なお、顧客の情報や社外秘の資料をAIに渡すときは、利用するサービスの契約や設定で、入力した情報がどう扱われるかを確認してから使います。扱う情報の範囲を社内で決めておくと、安心して使える場面が広がります。
11月6日(金)19時からのウェビナー「地域企業が“稼ぐ力”をAIで高める方法」では、経営者が自社の仕事と事業をAIで見直す視点を、具体的な進め方とあわせてお話しします。参加は無料です。