AIを入れた会社で、いま何が起きている?

生成AIは、資料づくりや議事録、メールの下書きで広く使われるようになりました。一方で、経営者からは「仕事は速くなったが、売上や事業の中身は変わっていない」という声が聞かれます。

これは地域企業に限った話ではありません。マッキンゼーが2025年11月に公表した調査では、105か国・1,993人の回答者のうち、88%が少なくとも1つの業務でAIを日常的に使っていると答えました。ところが、AIが営業利益(EBIT)の5%以上に寄与し、大きな価値を得ていると答えた「成果上位」は、約6%にとどまります。同じ調査では、回答者の約8割がAIの目的に効率化を挙げており、成果上位の企業は効率化に加えて、成長や新しい価値づくりも目的に置いていました。

AIを使うこと自体は、もう珍しくありません。差がつき始めているのは、使った先で何が変わったかです。

効率化で止まる会社は、どこで止まっている?

効率化で止まる会社には、共通する特徴が3つあります。

1つめは、成果の物差しが作業時間しかないことです。「資料づくりが半分の時間になった」は分かりやすい成果です。ただ、その物差しだけで見ていると、AIの使い道も、時間を減らせる仕事の中から選ぶことになります。

2つめは、浮いた時間の行き先が決まっていないことです。作業が早く終わっても、次に何をするかが決まっていなければ、時間は別の作業や、より丁寧な資料づくりに吸収されます。忙しさは変わらず、稼ぎ方も変わりません。

3つめは、AIを使う人と、事業を判断する人が離れていることです。担当者が個人の工夫でAIを使い、その成果が経営の判断に上がってこない。この形では、AIの効果は個人の生産性の範囲を出ません。

AlphaDrive代表の麻生要一は著書『AI収益進化論』で、効率化のほうが測りやすく、稟議や会議で説明しやすいため、AIの議論は放っておくと効率化に寄っていくと指摘しています。止まっているのは、怠けたからではありません。測りやすいものから進めた結果です。

売上につなげる会社は、何をしている?

売上につなげる会社は、AIの使い方を2つに分けて考えています。今ある仕事を速くする使い方と、これまでなかった商品や売り方をつくる使い方です。前者を続けながら、後者に時間と人を振り向けます。

同書は、同じChatGPTやClaudeを使っていても、どちらの使い方にもなると書いています。違いは、何をやらせるか、何を入れるか、何を測るか、誰が判断するかにあります。

売上につなげる会社では、AIに渡す情報に、社内の書類だけでなく、顧客から聞いた言葉や現場で気づいたことが入っています。測るのは作業時間だけでなく、新しく生まれた問い合わせや受注です。そして、何を試すかを決めるのは経営者自身です。

自社はどちらに近いか、どう確かめる?

次の3つの問いで、現在地を確かめられます。

1つめは、AIで減った時間を、何に使ったか言えるかです。言えなければ、時間は吸収されている可能性があります。

2つめは、AIに渡しているのが社内の書類だけか、顧客の声や現場の気づきも入っているかです。一般的な情報だけを渡せば、AIはどの会社にも当てはまる答えを返します。

3つめは、AIの成果を作業時間以外の数字で見ているかです。新しい顧客との接点や、試した商品の反応を見ていれば、売上に向かう道筋が見えてきます。

効率化から始めることは、間違いではありません。多くの会社にとって、AIの入口は効率化です。大切なのは、そこで止めずに、次の一手を決めることです。次の記事では、AIを入れた後の最初の一手を考えます。

11月6日(金)19時から、オンラインのウェビナー「地域企業が“稼ぐ力”をAIで高める方法」を開催します。効率化の先で売上や付加価値をつくる考え方を、地域の実践とあわせてお話しします。生成AIを使い始めた地域企業の経営者・経営層の方が対象で、参加は無料です。

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